大慶直胤(花押)天保六年仲秋
実家の押入れから日本刀が出てきた!?
銃砲刀剣類の相続を自力でやってみる
調べて楽しむ研究所!
実家の押入れから日本刀が出てきた!
はわわどうしよう…
今回はそんな、いつ誰に訪れてもおかしくないドッキリエピソードについての顛末と、ついでに銃砲刀剣類の相続手続きについてご説明したいとおもいます。
いつもお手伝いをしてくれるぽんきちくんはお休み、代わりにお母ちゃんが相手をしてくれます。(笑)
取り扱うのは、
打刀 (長さ:71.4cm)
脇差(長さ:54.9cm)
以上、謎の二振り。
さてその真相や如何に。

※以下に述べる諸手続きは、平成30年時点での実体験をもとにしています。
時期により所轄、法令共に変化している可能性がありますので、あくまで参考程度に留めていただくようお願いいたします。
もくじ.
2.美宝堂 ▽
3.手続きの流れ ▽
4.古式銃砲・刀剣類発見届出済証 ▽
5.銃砲刀剣類登録審査会の案内 ▽
6.銃砲刀剣類登録証 ▽
7.所有者変更の届出 ▽
8.おまけ、直胤の評価 ▽
1.知らん刀が出てきたのだが?
それは父が亡くなって久しく、風の向くまま気の向くままに片付けたり片付けなかったりの実家を珍しく片付けていた日のことでした。
ゴソゴソ…
私: | そう云えば刀って無かったっけ? あれそのままになってるとマズいんじゃない? |
母: | 確か親戚の叔父さんにあげたとかナントカじゃなかったかいな。 |
私: | ふーん…(ゴソゴソ)なぁ、この押入れの奥にある棒状の物体ってなn… |
母: | (( ロ)゚ ゚ |
私: | (ΦωΦ)…⚔ |
3.古美術美宝堂
金銭的な欲望と遵法的な諸手続きに関するアレコレが頭の中を駆け巡り、結局パニックになっている私を尻目にお母ちゃんの行動は早かった。
出入りの仏具屋さんの紹介で江府町江尾にある古美術店美宝堂へと、なんと既にアポイントを入れていたのだ。
余談ですが小ぶりのラーメン屋さんもやっておられます。
あっさり系で、季節毎の山菜を炊き込んだご飯もオマケしてくれたり。
鑑定してくださったご店主によると、
- 刀の方は新々刀期のものであり、悪いものでは無いが私が妄想するような金額(内緒)ではない
- 脇差には値が付かない
- 脇差込〇十万で買い取る事も出来るが、その程度の金額で手放すぐらいなら御尊父のお気持ちを汲み、遺品として相続し、大事にしたほうが有益ではないか?
- 相続するのであればまず警察署に届ける事から始めなければならない
お見立てについては後々わかってくることがあるとして、この時点ではご店主のアドバイスに従い相続の方向で事を進めようと決めました。
妄想上の金額で売り払い、豪遊する気満々のお母ちゃんを無視して。
3.手続きの流れ
ここでいったん手続きの流れについてご説明します。
今でこそ理解できますが、当初はこういう事がさっぱりわからなかったので本当に困りました。
そして一度やってしまうと仕事でもない限り二度と用の無い知識だという徒労感。
なるほどこういう時のために行政書士という仕事があるんですね。
1. | 発見 : ⇩ 書類も何もない場合ここから |
2. | 警察へ出頭 発見届出済証GET 一次保管可 |
3. | 教育委員会から連絡 登録審査会の案内 |
4. | 登録審査会出席 美術品認定(※) : ⇩ 認定証がある場合ここから |
5. | 所有者変更届 |
(※)鑑定の結果美術品としての価値が認められなかった場合、殺傷能力があるだけの単なる物品です。
なので所持することができません。
再度警察に出頭し廃棄の手続きとなります。
私はこのルートを通りませんでしたので本記事では触れません。
4.古式銃砲刀剣類発見届出済証
日を改めて訪れたのは黒坂警察署。
出頭するのは、発見者の住所ではなく発見した場所を管轄する警察署
銃砲刀剣類の届出に詳しい方が限られているようで、今回のような用件で出かける場合は事前に一報、確認したほうがよさそうです。
私の場合は、担当者ご不在との事で日を改めて出直す事となりました。
- この票を受領後、速やかに登録申請をしてください。
速やかに登録申請をしなかった場合は、この票があっても、銃砲刀剣類所持等取締法第3条第1項違反(不法所持)となります。 - 教育委員会に登録の申請をする際は、この票を登録申請書に添えて差し出してください。
- 登録を受けないと他人に譲り渡す等の事はできません。
- 登録されなかった場合は、所持することができないので警察署に提出してください。
- (2)の票と(3)の票とは切り離さないで下さい。
- この票を亡失又は著しく毀損したときは、速やかに届出をした警察署に申し出てください。
届出済証については以上です。
5.銃砲刀剣類登録審査会の案内
内容は右のとおり。
私のもとには鳥取県西部総合事務所での開催を案内いただきました。
これが発見場所によるものか、発見者の現住所によるものかは不明。
ところが、審査会の開催が平日であるため、都合がつかず伸ばしゝになっていたところ…
6.銃砲刀剣類登録証
これら2通ともに、刀が見つかった押入れとは違う部屋、今にも焼却場に持って行かんとするゴミの山の中から、奇跡のサルベージでした。
鑑定書(後述)は別にあります。
内容をチラっと読んでみると、茎(なかご)に切ってある銘やサイズなどが書き出してあります。
これは鑑定という訳ではなくて、これこれこういう特徴の刀を誰某が持っている、と紐づけを行うための書類に過ぎません。
実は美宝堂の段で
大慶直胤(花押)天保六年仲秋
であるという事はわかっていましたが、これでいちおうほぼ確定となりました。
何故なら、登録証があるという事は即ち鑑定を経ているという事になるからです。
これにてめでたく4.の段、すなわち登録審査会の出席と美術品としての鑑定を経ることなく次へ進むことが出来るようになりました。
格言.
先延ばしにして解決する問題もある
再三連絡をいただいていた県教育委員会には登録証を発見した旨の連絡を行い、残すところは最後の工程です。
まことに申し訳ありませんでした…
7.銃砲刀剣類、所有者変更の届出
やったぜ!
もう楽勝じゃん。
などと無邪気に喜ぶ私は、そもそも問題がここまで複雑になった原因に気づいていない幸せ者だったかもしれません…
登録証と刀は同じ場所に置いとけ
いいか、絶対だ
登録証の見つからない刀ってのはな、印鑑が無くなった預金通帳の50倍ぐらいめんどくせぇぞ
そして、もしかすると気づいておられる注意深い人がいらっしゃるかもしれません。
刀剣二振りの登録県が違う事に。
何が問題なのかというと…
登録の変更は、当然登録証を発行した自治体の教育委員会(または担当部署)に届け出なければならない
鳥取県地域づくり推進部文化財課
銃砲刀剣類の登録
ここからの手続きについてはそれぞれ(切れていなければ)リンクページに詳しく書いてありますのでそれに従って進めましょう。
以上で手続きはおしまいです。
は~、疲れた…
8.おまけ、直胤の評価
現在は廃止されている鑑定区分の為効力が無いようですが、その他の情報なども含めて大雑把にどれぐらいの位置にある刀なのかは想像できます。
こういった付属品無しの初見で、美宝堂のご店主は実に的確な鑑定をなさっていたと今更ながら思います。
プロフェッショナルの知識と教養に舌を巻くとともに、不慣れな一見客に情け深いあしらいをしてくださった事に、この場を借りてお礼申し上げたいと思います。