川平発電所

鳥取県 日野川水系の小水力発電所
所長

川平発電所は令和4年現在ESSの所有する小水力発電所で鳥取県の江府町久連にあります。

広島電気によって昭和6年に建設された、日野川水系でたぶん4番目ぐらいに古い水力発電所で、現役のものとしては2番目の古参となります。

川平発電所の旧建屋
川平発電所の旧建屋/撮影:2018-07-09

建設当初は最大出力が1,250kWでした。
令和2年、ESSに移管すると同時に設備を変更。
FIT制度が適用され、現在は最大出力198kWの小水力発電所として運転しています。

また川平発電所の存在を複雑にしている主な原因である、川平第二発電所と再生エネルギー関連の法令については後述します。

※ESS
株式会社エネルギア・ソリューション・アンド・サービス
2001年、中国電力の100%出資子会社として設立された総合エネルギー企業
※4番目ぐらいに古い
1番目は前回ご紹介した旭発電所
2番目は認定土木遺産の江尾発電所
3番目は根雨電気の津地発電所
鳥取県西部日野川水系の水力発電所、川平発電所

もくじ

日野川水系の水力発電所
新川平発電所
俣野川発電所
新幡郷発電所
日野川水系の水力発電所
川平発電所 ⇦ いまここ
所在地        
川平堰堤       
新旧の諸元      
川平第二発電所    
沿革         
新石見小水力発電所
新日野上小水力発電所
若松川発電所
遺構

所在地

ぽんきちくん

取水ダムは道の駅奥大山の西側にあって、取水口や排砂ゲートなど主なギミックは川向こう、日野川左岸に固まっています。

国道からはぜんぜん見えませんので、レミコンさんとこの横道に入って鉄穴橋を渡りましょう。
橋を渡って突き当りの丁字路を…

左👈: 認定土木遺産の旧江尾発電所
右👉: 目的地の川平堰堤と川平発電所

です。

発電所は堰堤を通り過ぎた先、基本川に沿ってまっすぐだけど、とっても狭いので注意ね!
ちなみに地図はこちら。

川平ダム

川平発電所の取水堰堤、川平堰堤
改築前の川平堰堤/撮影:2019-11-10

堰堤行きます!
(0゚・∀・)ツヤツヤ ⇦ 堰堤が好き

古くは川平堰堤と表記されていましたが、表記ゆれを助長するのもなんですので、現在の主流である川平ダムとしておきます。

川平発電所の取水堰堤、川平堰堤
法面危機一髪/撮影:2018-10-01

昭和6年に竣工してから長年の風雨に耐え、元々年季が入っていたところに2018年の台風24号。
止めを刺されてしまいました。

台風通過の際に右岸(国道側)の法面が崩壊…、なんかいろいろと間一髪でした。

川平発電所の取水堰堤、川平堰堤とその扇型魚道
綺麗になった川平堰堤/撮影:2022-04-09

その後、法面の修繕とたまたま同時だったのか、それともついでだったのかESSへ移管のタイミングで改築が施され現在の姿に。

ぽんきちくん あの足ツボに良さそうなツブツブって何ですか?

所〕うん、気持ちよさそうだよね^^
えーとあれは、

川平堰堤の三面図
川平堰堤の三面図/撮影:2021-04-18


扇型魚道っていうらしい。

ぽ〕ほえー!

参考までに、何気に貴重な改修前の図面もこちらに埋めておきます。

川平発電所取水口
川平発電所取水口/撮影:2022-04-09
因みにこちらが川平ダム随一のワクワクスポットである取水口。
ゆるいカーブを描くカベがみどころです。
広義での水制工にあたるんじゃないですかね。

新旧の緒元データ

まずおなじみの「広島電気沿革史(昭和9)から。

第七章 事業狀態
【川平電所】

本發電所は、舊山陰電氣の保有せし水利権を本社に於て繼承し、日野川水系日野川本流及大谷渓流を利用し、江尾發電所の下流鳥取縣日野郡江尾村大字久連字川平に新設せるものにして、昭和五年六月工事に着手し、昭和六年八月落成同月十九日仕様認可を得て運轉を開始し、最大一,二五〇「キロワツト」を發電しつゝあり。
設備の概要を述ぶれば左の如し。

川平発電所、広島電気沿革史より
出典:廣島電氣沿革史/パブリックコンテンツ
使用河川名 日野川
使用水量 六二五立方尺
有効落差 三一.五尺

水車

種類 竪軸單放水「プロペラータービン」
馬力數 二,〇〇〇馬力
調速機ノ
種類
壓油式自動調速機及自動水位調整期並用
箇數 一臺
製造者名 日立製作所

發電機

容量 一,五六二K,V,A,
電壓 三,三〇〇(ヴォルト)
回轉數 二五七回轉(毎分)
周波數 六〇(サイクル)
箇數 一臺
製造者名 日立製作所
廣島電氣沿革史(昭和9)

その他の引用は、緊急性が感じられませんのでたたんでおきます。
特に抜き出すなら…、最大出力が198kWにダウンしている事ぐらいです。
どちらにしても最後の沿革のところでサラッとなぞりますので。

クリックで詳細
所長

クックック…、スキモノですねあなた。
わざわざこんなところまで見るなんて。
いろいろなところに点在している情報を一ヶ所にまとめただけですのでぜんぜん面白くありませんよ?

それでは、中国電力の報道資料に移管前の緒元が記載されていましたのでまず引用します。

発電形式 水路式
最大出力 1,300kW
最大使用水量 17.39㎥/s
有効落差 9.55m
運転開始年月 昭和6年8月
所在地 鳥取県日野郡江府町

敷地内の標識から現在の緒元。

名称 川平発電所
所在地 鳥取県日野郡江府町大字久連977
発電出力 198kW
運転開始 2021(令和3)3月31日
発電形式 水路式

ESSによる運転開始の報道資料

発電所名 川平発電所
発電形式 水路式
最大出力 198kW
最大使用水量 2.5㎥/s
有効落差 9.643m
運転開始年月 令和3年3月
…以下略

電力土木技術協会様のデータベースからも情報を補填しながらまとめます。
まず中国電力時代の緒元。

中国電力資料より

発電所名 川平発電所
発電形式 水路式
最大出力 1,300kW
最大使用水量 17.39㎥/s
有効落差 9.55m

ゼンリンより

所在地    鳥取県日野郡江府町久連977-2

廣島電氣沿革史より

運転開始   昭和6年8月19日
水車 竪軸単放水プロペラータービン×1
2,000馬力
日立製作所
発電機 1,562kVA
3,300V
257回転/m
60サイクル
一基
日立製作所

電力土木技術協会データベースより

設置形式 地上式
建屋構造 二床式
発電方式 流込み式
取水位 125.75m
放水位 115.14m
導水路総延長 1,019.3m

次に、ESSが管理運営している令和4年現在の緒元。
どう考えても変わっているはずの無いものは(同上)とします。

発電所名 (同上) 川平発電所
発電形式 (同上) 水路式
発電方式 (同上) 流込み式
最大出力 (ESS) 198kW(DOWN⇩)
最大使用水量 (ESS) 2.5㎥/s(DOWN⇩)
有効落差 (ESS) 9.643m(UP⇧)
運転開始年月 (ESS) 2021(令和3)3月31日
所在地 (検分) 鳥取県日野郡江府町久連977(※3)
水車 (ESS) 水中タービン発電機×1(※4)
取水位 (同上) 125.75m
放水位 (同上) 115.14m
導水路総延長 (同上) 1,019.3m(※5)
※3 屋外に移設された発電機(発電所)には番地977、またゼンリン地図では建屋が番地977-2となっています
※4 川平第二発電所の水中タービンがイームル工業製(ESS報道資料、後述)
外観的にも瓜二つですので難しく考えず同社製と考えてよろしいかと
※5 発電機(発電所)が屋外に移設されたので少し伸びているかもしれません

それでは他の目ぼしい写真を駆け足でご覧いただいてから川平第二発電所に行きたいと思います。
沿革については第一と第二をまとめて列記します。

Gallery

川平発電所の導水路
導水路/撮影:2021-04-20
川平発電所の水槽
水槽/撮影:2021-10-03
川平発電所の放水口
放水口/撮影:2021-10-03

川平第ニ発電所

所長

ここ大事なところです。
慎重にやりましょう。

川平第二発電所は、中国電力によって建設され平成18年より運転を開始した小水力発電所です。

鳥取県西部日野川水系の水力発電所、川平発電所
川平第二発電所/撮影:2021-04-18

その名の通り川平発電所に併設し、その余水を有効利用する目的で開発が計画されました。

いいですか?
落ち着いて聞いてください。

見た目的には、発電機のついた水圧管がニョキっと地上に露出しているだけですので、発電所と呼ぶには強い抵抗を感じる事でしょう。

しかしあくまで発電所です。



発電所ですから


………good!
次に、
RPS法対象設備として中国電力が開発した初めての水力発電所である
水中タービン発電機、FRPM水圧管などを採用し低コストで建設された

という点を特に言い添えておきます。

緒元は中国電力から発表された建設工事開始と営業運転開始のプレスリリース、及びその他から。

発電所名 川平第二発電所
発電形式 水路式
発電方式 流れ込み式
水車・発電機  イームル工業製 水中タービン発電機
最大出力 120kW
最大使用水量 1.6㎥/s
有効落差 9.27m(技術協会dbより)
水路延長 約6m(取水口)
約39m(水圧管路)
約6m(発電所)
約4m(放水路)

沿革

データが揃いました、川平発電所第二発電所、そしてそれらを取り巻く周辺の出来事を時系列に沿って並べて見てみましょう。

1930年/昭和5年6月

広島電気が、山陰電気から水利権を引き継ぎ川平発電所の建設を開始

1931年/昭和6年8月19日

川平発電所が落成、運転開始
最大出力は1,250kW

1941年/昭和16年8月30日

配電統制令により広島電気は解散し中国配電となる
川平発電所の事業主が中国配電に

1951年/昭和26年5月1日

日本発送電中国支社⇔中国配電の合併により中国電力設立
川平発電所の事業主が中国電力に

2002年/平成14年

RPS法施行
電力事業者に対して新エネルギーの利用が義務付けられる

2005年/平成17年3月17日

川平第二発電所の建設を地元へ申し入れ

2006年/平成18年1月13日

川平第二発電所の工事計画届提出と着工

2006年/平成18年9月27日

川平第二発電所の営業運転開始

2012年/平成24年7月1日

再エネ特措法の施行

2019年/令和元年

中国電力が川平発電所をESSへ譲渡、FIT制度を適用し改修スタート

2021年/令和3年3月31日

川平発電所が最大出力198kWの小水力発電として営業運転を開始

ぽんきちくん

ねぇ所長。
前から思ってたんですけど、なんで同じ敷地内の発電所がふたつに分かれてるんですか?

新エネルギーの利用を義務付けるRPS法に対応するために、余水を利用する第二発電所を急遽こしらえたとこまではわかるんですけど…

川平発電所と川平第二発電所
んー。
第一発電所を改築したときに198kWと120kW、2基の発電装置を備えた出力318kWの小水力発電所にすることは出来なかったのかなブツブツ


あっ💡
もしかして固定価格買取制度の調達価格、
200kW未満 25円+税
200kW以上、1,000kW未満 21円+税

っていうのになんか関係…(モガッ)

所長

そこまでだ!

ふ~…、アホか君は💦
黒い服を着た人たちが来て連れて行かれるぞ!
(((;゚Д゚)))ドキドキ

そそれではこここ今回はここの辺までにしておきたいと思いますアタフタ…

ここまではなんとなく農協系、中国電力系と続く流れでしたね。
次回からは第三セクター系に入って、新石見小水力発電所の話でもし

ガチャッ
…?
誰だ君たちは、勝手に入っ(ゴンッ🔨)
うっ…ドサッ
ズルズル…バタン!

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