米沢発電所

鳥取県 日野川水系の水力発電所
所長

米沢発電所は、鳥取県日野郡江府町にある小水力発電所です。
昭和32年、米沢農協により建設されました。
また令和2年より設備更新を開始し、翌3年3月17日に落成。
現在のような姿になっています。

鳥取西部農業協同組合 江府支所米沢発電所
米沢発電所/撮影:2022-07-02

前項までの発電所と違い、こちら米沢発電所が設備更新される以前の写真を私は所有していません。
しかし、ここの見どころは何といっても2つの支流からなる複雑な取水経路です。
そのへんはバッチリ取材してありますので以下詳しくご説明します。
それじゃ始めようじゃないか、ぽんきちくん!

ぽんきちくん ほーい。

もくじ

日野川水系の水力発電所
新川平発電所
俣野川発電所
新幡郷発電所
日野川水系の水力発電所
米沢発電所 ⇦ いまここ
所在地           
上水槽と除塵機       
船谷川導水路隧道(仮)出口 
船谷川導水路隧道(仮)入口 
沈砂池と余水吐       
美用谷川取水口       
船谷川取水口        
沿革と旧設備の緒元     
設備更新と新しい緒元    
新石見小水力発電所
新日野上小水力発電所
若松川発電所
遺構
鳥取西部農業協同組合 江府支所米沢発電所

所在地

貝田砂防堰堤
貝田砂防堰堤

何はともあれ江尾の町からスタートします。
国道482に入り、美宝堂の前を通って貝田方面に…
あー、分かりにくいな💦
そうだ💡 貝田砂防堰堤のすぐ近(ゴンッ!)
うっドサッ

ぽんきちくん

わかるか!
余計迷うわ。
ポイッ⌒🔨

上水槽&除塵機

それでは皆さんお待ちかね!
導水路探索のコーナーです。
(0゚・∀・)ツヤツヤ

事前情報等見つかりませんでしたので、発電所を出発点にして勘を頼りに遡っていこうと思います。

いまここ。

米沢発電所の上水槽と除塵機
上水槽/撮影:2022-07-02

船谷川の流れる峡谷を跨いで貝田と宮市をつなぐ宮市大橋まで行けば、そこがいきなり目標の標高です。
発電所の方に目を向けると、すぐ目の前に上水槽と除塵機がありますが…

-立禁-

当たり前ですが、無理して近づく理由も法的根拠もありません。

そう言えばあのビニールハウスは新石見小水力発電所の上水槽にもありました。
最近の小水力発電施設は建屋もそうですがいろいろとモジュール化されているんだろうなぁ、などと遠目に考えつつ先に進みましょう。

船谷川導水路隧道(仮)出口

いまここ。

船谷川導水路隧道
船谷川導水路隧道
暗渠/撮影:2022-07-02

上流方面に視線を転じてみると、山腹水路が暗渠になって伸びています。
草は刈ってあるけど、薮に突っ込むのイヤだなぁ。


そうだっ💡
こういう時こそタヌ(ゴンッ!)
うっドサッ

ぽんきちくん 嫌だっつーの!
とっとと行け。
ポイッ⌒🔨
船谷川導水路隧道
隧道出口/撮影:2022-07-02

結局山道は100㍍も無く、突き当りには隧道の出口がありました。
(0゚・∀・)テカテカ✨
当然名前などわかりませんし、もともと無いのかもしれません。
敢えて呼ぶとすれば船谷川導水路隧道ってとこでしょうか。

それでは地図で凡その目星をつけてから、丘の反対側へ向かいます。

船谷川導水路隧道(仮)入口

いまここ。

船谷川導水路隧道
隧道入口/撮影:2022-07-02

あったあった!
時系列的には⇩の調整池が先に見つかります。

なぁんだ、これだけ?
などと思った人もそうでない人も、危ないので近寄ったらダメだぜ?
落ちたら真っ暗な水路に吸い込まれておおよそ1km地底の旅、だからな?

隧道前沈砂池&余水吐

いまここ。

船谷川導水路隧道前の沈砂池
船谷川導水路隧道前の調整池
隧道前沈砂池/撮影:2022-07-02

デカい…そして長い!

船谷川美用谷川から取り込んだ水がここに合流。
余程水量が安定しないからなのか、大袈裟な程に長い越流堤が印象的で、除塵機の向こう側へと大量の水がギャボギャボと吸い込まれて行きます。

隧道前で流量をサージすることが目的の付帯施設だとは思うのですが、はっきりした情報があるわけでは無いので、いちおう沈砂池としておきました。

ここで2方向からの水路が合流しています。
さて、どっちから行こうかな。

美用谷川取水口

いまここ。

美用谷川取水口

まずは美用谷川から行きましょうか。

美用谷川取水口
美用谷川取水口/撮影:2022-07-02

砂防的な堤体でかき集めた流水を、恐らく平常時全量取水しています。
その他、そこここの小流から涙ぐましい程の努力でかき集めた水が…

こちら。

美用谷川導水路
美用谷川側導水路/撮影:2022-07-02

なぁんだ、これだけ?
などと思った人もそうでない人も(しつこい)、背後にあるのはあのギャボギャボの沈砂池と1kmの真っ暗な水路隧道だからな。
危ないぜ?

船谷川取水口

いまここ。

船谷川取水口
船谷川導水路
船谷川側の導水路/撮影:2022-07-02

次に船谷川。
こちらの水量が圧倒的に多い、というかメインです。

船谷川取水口
船谷川取水口/撮影:2022-07-02

⇧の水路橋からそう離れていない場所に堰があり、ここで取水しています。

ここから上水槽まで水路延長が1kmちょい(1,234m)な訳ですが、有効落差52.3m…
どうなの?
ぽんきちくん。

ぽんきちくん

優秀だと思います。

ちなみに日野川で最初に作られた旭発電所は、水路延長が約2kmで有効落差24.4m。
取水量からなんから違いますから同列に論じる事は出来ないですけど、効率の良いシステムだって言われるのもなんかすっごい納得かも…。

沿革と旧設備の緒元

米沢発電所について知ることの出来る、手元の資料としては碑文の写しと江府町史があります。
まずは碑文の写しより。

米沢農業協同組合建設

着工 昭和31年4月1日
竣工 昭和32年1月18日
総工費 金弐千壱百万円也
導水路延長 1,234㍍
余水路 ○2㍍
放水路 52㍍
水圧鉄管 62㍍
有効落差 52㍍30
出力 135粁ワツト
機械設備 広島市 イームル工業株式会社
工事施工者 米子市 新栄建設株式会社
工事監督 江府町 安藤善平
他割愛させていただきます。
敷地内碑文より

粁=キロメートルと読みます。
細かい事を言えば適切では無いのでしょうが、キロワットと読ませたいんでしょうね。

次に江府町史から一部抜粋します。

米沢農協と神奈川農協は、農村電化の普及と組合員の福祉の増進を図るため、それぞれ次のような発電所を建設している。
神奈川農協発電所の場合、高谷地内の俣野川にあり、(33年3月)総工費2,300万円を要したという。
米沢農協発電所は、船谷地内に、総工費2,092万円で建設(32年4月)した。

巻末年表
昭和32年4月:米沢農協小水力発電所完工。(135キロワットアワー)

江府町史(昭和50年)より
所長

俣野川ダムの建設によって消失した神奈川農協発電所についての記述が目を引きますが、話が逸れますので今回は触れません。

本件について江府町史から得られる有力な情報は、なんといっても設備更新前の名称
米沢農協小水力発電所
です。

導水路延長と有効落差については既に述べました。
残念ながらこちらには、事業規模的なものを推測し得る材料が

最大出力 135kW
総工費 2,092万円

しか見つけることができません。

竣工時の売電料は昭和33年とかけ離れているとは思えませんので3円10銭とし、出力も旧畑小水力発電所旧根雨小水力発電所の間ぐらいです。
計算するまでも無く前述2ヶ所の発電所を参考にして…、
現代の感覚で2千万~4千万円ぐらいの年間売り上げを見込むことが出来る発電施設であったのでしょう。

設備更新と新しい緒元

米沢発電所の更新工事
米沢発電所の更新工事/撮影:2020-10-25

冒頭で述べた通り2020年より設備更新を開始し、翌21年3月17日に落成。
現在のような姿(冒頭になっています。

施工は株式会社コーセン、江尾に社屋を構える土建屋さんです。

以下、更新後新建屋(立禁⛔)看板下のプレートを望遠にて。

固定価格買取制度に基づく再生利用可能エネルギー発電事業の認定発電施設

区分 小水力発電所
名称 米沢発電所
発電出力 160kW
発電事業者 京葉ガスエナジーソリューション株式会社
代表取締役社長
運転開始年月日 2020年12月10日

次に日本農業新聞の記事をJAの広報ページ(2022.04.25)より引用します。

JA鳥取西部は15日、更新工事を完了した日野町の畑小水力発電所で竣工(しゅんこう)式を開いた。更新は、千葉県の大手プラントメーカーの京葉ガスエナジーソリューションとの協働事業。
式にはJAや同社の役職員、地元建設会社など関係者らが出席し、JAの谷本晴美組合長らが玉串をささげ、安全稼働などを祈願した。
同発電所は1958年に竣工し、地域の生活向上や農業の近代化などに貢献してきた。今年1月5日に更新が完了して売電をスタートし、年間120万キロワットの発電を目指す。
谷本組合長は「水力発電は地産地消のエネルギーとして持続可能な開発目標(SDGs)の取り組みにもつながる。
発電所を設置した先人の思いを引き継ぎ、地域や農業、暮らしを守る」と話した。
JAは昨年12月までに上中山(大山町)、米沢(江府町)、溝口(伯耆町)の3小水力発電所も更新した。
ぽんきちくん

まずプレートの内容から名前が確定します。
米沢発電所でいちおう間違いないんですが、日本農業新聞の記事からもわかるとおり、米沢小水力発電所の呼び名も捨てがたいみたいです。

そしてとても気になる農協とのかかわりについて、京葉ガスエナジーに売却じゃなくて協働なんだそうです。
スッキリしたところで今回はおしまい。

バイビー!

水力の記事一覧

日野川水系の水力発電所
新川平発電所
俣野川発電所
新幡郷発電所
日野川水系の水力発電所
米沢発電所 ⇦ いまここ
所在地           
上水槽と除塵機       
船谷川導水路隧道(仮)出口 
船谷川導水路隧道(仮)入口 
沈砂池と余水吐       
美用谷川取水口       
船谷川取水口        
沿革と旧設備の緒元     
設備更新と新しい緒元    
新石見小水力発電所
新日野上小水力発電所
若松川発電所
遺構

ご来場ありがとうございました。
もしよろしければ…

そのへんの広告をポチッとしていただけたらすごい励みになります!